われわれは、森林資源の豊かな日本の気候風土に合う「木の住まい」に、古の時代から親しんできました。そして伝統技術による「木の住まい」のなかで、様々な生活文化が醸成されてきました。
昨今、伝統技術が機械によるものにおきかえられていますが、全ての技術を画一的な機械やITに取って換えることは難しいことであります。逆に、多くのことが可能になった世の中であるが故に、伝統的に培ってきた「匠の技」の重要性が際立ってきているとも言えます。
一級建築士でもある大工家の永山一則さんは、伝統的な「木の住まい」を実現させる「手による技術」の伝承を志す、数少ない匠のひとりです。今日の技術を保証する一級建築士としての知識と、先代の棟梁から引き継いだ「伝統的な技」によって、風土に根差した確実な住まいのあり方を実現させてきました。
本来「住まい」とは、固有の住み手のために、ある土地の上に建てられるものであり、自動車などの工業生産品とは違う、一品生産の伝統工芸品のようなものです。
様々な個性をもつ木材を画一的に工場にてプレカットすることは無理があり、むしろ、それぞれの木材の個性に合わせて、道具によって「手刻み」されるほうこそが合理的であると言えます。
大工衆を率いながら「手刻み」を続ける棟梁/大工家の永山一則さんを応援します。
東京理科大学准教授・フランス政府公認建築家dplg
博士(美術史学) 山名 善之)